Greece

 

学生生活最後のイースター休暇。5月末には大きな院の卒業試験を控えているが、どこかに行きたい(笑)。イースター直前よりヨーロッパではサマータイムが始まる。寒くて暗〜い、こちらの気まで滅入ってしまう冬時間を終えると、毎年ウキウキして来る。曇りや雨の多い、空の低いイギリスに住んでいるとスカッと抜けたような青い空が恋しくなる。行きたい候補その@エジプト、そのAトルコ、そのBギリシャ。エジプトは今でも憧れの国。でも、このイースター直前、悲惨な乱射事件が起こり多くの日本人も犠牲になった。治安が落ち着いてから、もっと歳を取ってからでもピラミッドは逃げないと今回は見送り。トルコはどうしても訪れたい名所が広い国中に点在し、移動も非常に不便だった為、堪能するには日程的に無理があった。そしてギリシャ。チケットも、まだ間に合いそうだし、行きたい所もクリア出来そう♪ギリシャと言えば遺跡とエーゲ海の島々。今回の旅は世界遺産巡りとミコノス島に決定!

 待ちに待ったイースター。ロンドンからアテネへ飛ぶ。いかにもギリシャらしいネーミングのオリンピックエアーに搭乗。同じヨーロッパ内と言えど、やはり遠い。飛行時間は約5時間。しかしこの飛行機、今まで乗った飛行機の中で最も生命の危機を感じる老朽化したものだった(汗)。おまけにギリシャ人のヘビースモーカーぶりったらすごい!離陸して数分後、シートベルト着用のサインが消えると同時に、ほぼ全員が一斉に立ち上がる。ここは本当に飛行機内??と思う程、皆ウロウロ動き回りタバコをスパスパ。あっという間に機内がタバコの煙で白く霞がかる信じられない光景。最近は全席禁煙が主流となりつつある国際線だけど、ここだけは永遠に禁煙という言葉は無縁な気がする。それにしても喫煙コーナーと禁煙席の区別すら無い、この飛行機、如何なものか。。云年経った今でもそうなのかな?唯一、感動したことは機内食。ギリシャ料理の数々は、おっ、やるじゃん!と満足出来る物だった。因みに私にとってのワースト機内食、堂々の1位はBA(ブリティッシュ・エアウェイズ)。乗る度に出されたEnglish Breakfastは御勘弁。。

 朝早くにアテネ、エリニコン空港に無事到着。・・・が、着いて、またまたギョッ!!アテネへ向かうエクスプレスバスや、アテネ市内の全てのバス、電車、地下鉄等がストライキの為、完全にストップされていると言う。唯一の選択肢は悪評高きタクシー。慣れない地に行った時、最も騙され易いのが、このタクシー。ギリシャタクシーは余り信用出来ないと聞いていたし、ギリシャ人の顔と言ったら、やたら目が奥の方でギョロッとして、ギリシャ彫刻の様に彫りが深い。きっと良い人ばかりなのだろうけれど、乗らないかと声を掛けて来たドライバーの顔を見ていると、マフィアか何か、とにかく怪し気な人に見えてしまう。他の手段は無いので、行き先を告げ、事前に目的地までの料金、荷物量を決めてもらいエクストラが無い事を確認してから乗る。1日目はまずギリシャ北部に有る、メテオラという所に行きたかったのでアテネ市内の長距離専用のバスセンターまで無事に辿り着いた。郊外への電車は全てストップしていたものの、幸いにも長距離バスは運行していたので予定を変更する事無く出発。アテネ⇒トリカラ⇒カランバカとバスを乗り継ぎ6時間以上掛けて昼過ぎに到着した。空気の綺麗なひっそりとした村。早速、宿探しをして部屋に荷物を置いた後、いざメテオラに有る世界遺産の修道院へ。

  メテオラの修道院  修道院からの下界

 このカランバカよりふと上を見ると、何これ?ってギョッとする奇妙な形の岩山がポコポコ乱立?している。傘の取れた巨大エリンギってな感じ。この奇岩群こそがメテオラ。良くその頂上を見てみるとオレンジ屋根の修道院が張り付くように建っている。これこそ、今回、片道6時間以上も掛けて目指した世界遺産である。バスは1日たったの2便。ここでも、タクシーにお世話になる羽目に。でも、今回はとても感じのよい青年ドライバーで安心して、いざ、1番上のメガロ・メテオロン修道院へ。

 『怒り狂ったゼウス神が天界から投げつけた岩石』との伝説が残り、メテオロスという単語は『空中に浮いている』といった意味があるそうだ。どちらのフレーズもぴったり。14世紀に建てられたこれらの修道院、24建てられた内、多くはトルコ軍やドイツに攻撃され、現在使用されているのはたったの6つ。最近までは女性の巡礼は認められていなかったそう。肌を露出した洋服は勿論、ズボンも許されない。膝下のスカートのみ◎。膝上のタイトスカートをはいて行ってしまった為、心配したがセーフ。ズボンで来ていた女性達は巻きスカートを渡され、ズボンの上から身に付けさせられる。意味不明。。??534mもの高さの、きのこ岩に、ちょこんと立つこの修道院からの眺めは絶景そのものだった。教会や博物館、壁画等を見ながら感動しつつも、終始、『何故に、ここにこんな物を作らなくてはならなかったの?』とハテナの山。今現在の道や橋は全く無く、昔は、ここまで垂直のハシゴや、滑車に吊るした編み袋で修道士は上り下りしていたそう(しかも20世紀初頭まで!)。それ以前にどうやって材料を運んで建築したのだろう?それ故に世界遺産なのだけど、世の中って不思議が多い。

 帰りはひたすら下り坂だし、途中の色々な形をした奇岩も見たかったので、ぶらぶらと1時間程、歩きながら下山。細〜くて狭い岩の横に張りついて建つ小さな修道院が有ったり、珍しい花、放牧されたヤギの群れ等、楽しめた。途中の村で一休みにお茶してたら、ポツポツとにわか雨。傘も持っていないし、早く戻ろうと再出発した矢先、行きに頂上まで連れて行ってくれたタクシーのお兄ちゃんが、偶然通り掛かり、『お〜い、乗りなよ♪』って声を掛けてくれ、乗せてもらう。旅って、こんなワンシーンがとっても嬉しい。

 さて、夜の楽しみ、レストラン選び。某ガイドブックを見たらスブラキが最高!とのレストランが有るとの事。実際、行ってみると、怪しげな閑古鳥の鳴いたレストランだった。注文すると店主がそそくさと外出。スーパーの袋をさげて帰って来る。コメディーみたい。。肝心のスブラキはイマイチ。でも、グリークサラダとグリークヨーグルトは感激の美味しさだった。これは、レストランより、その近所のスーパーを誉めないとね・・・(笑)。

 翌朝は出来るだけ早くアテネに戻りたかったので早起きして出発!今日はストライキも解除され、電車にて戻る事に。バスより電車の方が時間も確実、早く戻れる♪←この日本の常識に、見事騙されるっ。予定時刻になっても乗り継ぐ電車は来ないわ、途中ですぐ停止。な〜んと8時間も掛かってしまった(号泣)。しかも驚いた事に電車を降りるとホーム上の階段なんぞは使わず、皆、平気でプラットホームを降り、線路を横切る。危な〜い!!これが当たり前の日常なのかな?

やっとアテネに到着したのは夕方。今朝までの静まり返った村とは正反対。やはり首都。物凄い量のバイクと車(しかもかなりオンボロ)、人々で驚くほど賑やかだった。ヨーロッパの筈なのにグンとアジアに近付いている気がした。ふと山の上を見ると、あのパルテノン神殿がそびえ立っているではないの!アテネの人にとってはこの2500年前の建造物が普段の生活で毎日、自然に目に入る1ショットなのだろうから凄い事だ。ホテルのチェックインを済ませ、身軽になって早速旧市街、プラカ地区の探索を開始。ここは19世紀の町並みがそのまま使われている特別保存地域。観光地だけあって細〜い道にもお土産屋さんやらレストランが所狭しと並んでいる。暗くなっていくアテネの夕暮れをブラブラ。明日、朝一で行く予定のパルテノン神殿がボーっとライトアップされて一層、雰囲気を醸し出す。暗くなった事だし、どの通りからもたまらなく美味しそうな匂いが漂ってきたので、この神殿を見ながら食事出来るタベルナ(庶民派レストラン)にてギリシャ料理を満喫。フェタチーズたっぷりのグリークサラダにタラモサラタ、ムサカ(ナスのラザニアみたいなもの)、カラマリ(イカのフリット)、スブラキ(串刺しステーキ)、ドルマテス(葡萄の葉にくるんだお米とひき肉料理)・・・等、やっぱり本場は何を食べても美味しい!どれもシンプルだけどヘルシー且つ、新鮮素材の個性をしっかり活かした物ばかりだった。

ぐっすり睡眠を取って、翌日は朝から楽しみにしていたアクロポリス遺跡へ出発。アクロポリスとは“高い丘の上の都市”といった意味らしい。せっせと息を切らせながら丘を登る。4月とは言え、余りの晴天で日差しも強く汗ばむ程だった。途中、小さな遺跡がちょこちょこと有り、ふと丘の下を見ると賑やかなアテネの町が小さくなって、ぐるりと見渡せる。空気が悪いのか、ひどくスモッグが掛かっていた。更に登ると、主役パルテノン神殿がど〜んと現れる。加工大理石を重ね合わせ、何と横31m、縦70m、高さ10mである。大迫力!紀元前438年に完成したこの建物は世界遺産の中の世界遺産といった感じだ。レリーフ等かなりの物が大英博物館に保管されている。おい、イギリス、そろそろ、お返ししたら?と本気で思う。

   

丘をのんびり遺跡を見ながら下り、アテネ市街を目指す。途中至る所に廃墟っぽい遺跡やら円形劇場、音楽堂等が有り、道1本挟んだだけで今度は凄まじい交通量と喧騒の日常が隣り合わせ。この古代と現代のごちゃまぜがいかにもギリシャらしいのだろう。2004年のオリンピックに向けて現在はきっと様変わりしただろうけれど、この当時は通りに薄汚い店が建ち並び、道路は20年位昔の日本製の車やバイクで溢れ、排気ガスやら色々で、いかにもアジアっぽい町並みだった。

大好きなお国の胃袋を垣間見れる市場へ行く。現代のアゴラと呼ばれるこの市場、新鮮なお肉や魚、果物が山積み!しかも、かなりグロテスクで、お肉がぶら下がって売られるその下には生きている鶏や動物(食用ですね・・・)が動き回っている檻が。そして、そのすぐ横ではオリーヴなんかが売られていて、結構衝撃的な光景である。ある意味、この国には原始的なエネルギーを感じた。市場で買った大きな美味しいイチゴを公園でほおばって一休みした後、再び教会や衛兵交代等を見ながら市内を散策した。小腹が空くと何度か食べ、そのうちにハマったのがギロ。最初は恐々口にしたが本当に美味しい!トルコのシシケバブの様な物である。逆三角形の肉の塊をグルグル回しながら焼き、注文すると、その場で長い包丁か電ノコでこそげ落として野菜と共にピタパンに包んでくれる。勿論、各スタンドによって味も全然違い、当たり外れもあり。プラカ地区で食べたギロが最も美味しかったのでアテネへ行かれる際は是非お試しあれ♪日が暮れてからは、アテネ1高い丘、リカビトスの丘にケーブルカーで登る。アテネの夜景を目に焼き付けた。何だか忙しいけれど、翌日はエーゲ海を船で渡りミコノス島へ行く。今回の旅のクライマックスである。

     

翌朝、地下鉄で最終駅ピレウスまで行き、そこから船に乗る。船は、眩しいほどの真っ青な穏やかなエーゲ海を進む。時々通過する島々にも真っ白な家が立ち並び美しい。イメージしていた通りの景色だったが、実はこのエーゲ海、冬や天気の悪い日は灰色の荒れた海と化し、別名“ゲ〜ゲ海”と呼ばれているそうだ(笑)。3時間後、船は憧れのミコノスに到着。エーゲ海の島の代名詞と言える大人気のこの島、真っ青な海と空にボーダーの様にも見える真っ白な建物が映えて、どこを見ても絵葉書のよう。家並みと海が一望出来る様に、丘の上のホテルを目指して歩く。今朝までのアテネの喧騒が嘘みたいに穏やかで時間が止っているかの様。部屋を見せてもらい、気に入った宿を見つけた後は、身軽になってお出かけ♪全て同じ様な真っ白な建物なので、迷路のよう。すぐ、迷ってしまうのだが、さまようのも又楽しい、小さなお洒落な島である。

   

翌日は、有名なスーパーパラダイスビーチに水着を用意して行ってみる。何が有名かと言うと、このビーチ、ヌーディストビーチでありゲイビーチなのである。勿論一般の人もOKなのだけれど、率はかなり高し。辺りを見回すと、男性や太ったおばちゃんのヌード等、見たくない姿も目に入る。・・・とは言え、大変品の良い洗練されたビーチである。さらさらの真っ白な砂浜にどこまでも透き通った青い海が、ムード満点☆☆☆でも、とてもとても脱ぐ勇気は無く、水着で普通に楽しんだ。4月でまだ、海水は冷たかったけれど泳いで(浸かって?)大満足。

   

とっても忙しかったけれど、それなりにゆっくり出来た今回の旅。目標の世界遺産巡りと、太陽燦々の青いエーゲ海も堪能出来たし、最高なイースター休暇となった。夜のフライトまで時間も無かったので、帰りはミコノスよりアテネへ小型機で飛ぶ。これまたオリンピック航空のプロペラ機で大丈夫か?!と心配続きだったけれど、窓からの真っ青な海と点在するエーゲ海の島々が、とびきり美しかった。アテネに無事着陸し、さぁロンドンへ!とチェックインしたところ、旅行会社の手続きミスで搭乗名簿から消されていたっ!!もっとギリシャで遊んでいたい気持ちは山々だけれど、それは困りますぅ〜と頼み込んで長い時間空港で待ち惚けを喰らいながら、何とか帰路へ。最後の最後まで、ハプニングも多い旅だったけれど、又訪れたい国の1つ。オリンピックの工事が間に合わないかも・・・なんてニュースを耳にすると『ギリシャらしいじゃない♪』と、笑えて来る。あの、汚いアジアチックなアテネ市内も今頃は小綺麗になった事だろう。又いつの日か、別のアテネを見に行こう。あのカラッとした空気と太陽、真っ青な海が恋しくなったら・・・。